麗の最期、一気に書き終わりました。
いろいろつっこみどころ満載だけど、ラストは満足。
ちゃんとアイカのところに帰るっていうの、忘れずにかけてよかった。
部分的にメモっていたものとは、麗もエルメノも真逆の心情吐露になっていますが、今回書いたほうがすごく優しいですね。
そのまま使おうか迷ったけど、流れ的になんかぶち壊しになりそうだったので、結局、お互いを思いやってるような形になりました。
「足掻けよ! 僕が憎いなら、もっと生きたいって足掻けよ!! 足掻いてみせろよ!! 生き物はみんなそうだ。どんなに最新の医術を施したって、死にたがってる奴はあっさり死ぬんだ。死にたくないって思ってる奴ほど、どんなに重症だってしぶとく生き残るもんなんだよ! カルーラ、お前は僕が憎いだろう!? 憎いなら僕を殺してみせろよ。その手で僕の永遠の命を終らせてみせろよ。僕は決してお前を愛してなんかやらない。お前はエルメノじゃない。……アイカじゃない。お前なんか大っ嫌いだ。僕の大切なものを奪ったお前なんか……大っ嫌いだっ!!! だから……死ぬな……カルーラ……」
〈↑解説〉
海の言うとおり、来世を約束してもらうためにエルメノではなくカルーラに殺してほしいというのを、相手の憎悪を煽り立ててやってもらおうとしたんだけど、なんかこのせりふでもカルーラ瀕死状態っぽいですよね。
本篇でもカルーラにとどめさしてもらう前に、結局カルーラが麗をかばって死んじゃいました。
使えない伏線張っちゃったかも???
「どうして……? エルメノ、どうして? お願いだ。掴んでくれ。今度こそ絶対に離さないから。帰ろう。僕たちのいるべき場所へ」
「君は、相変わらず子供だね。自分の世界しか見えていない。ううん、違うか。僕がいると、君は僕たちの世界しか見えなくなるんだ。君はアイカを愛してる。彼女は自分の思い通りに出来ない人だ。貴重だろう、君にとって。でも、僕には必要ない人だ。君と僕は、すでに一人じゃない。一人にはなれない。僕は、その手をとるわけにはいかないんだ」
獅子が麗の喉笛に食らいつく。
「さようなら。でも、また会おう。君が僕を必要としてくれるようになったら、また会いに行くよ」
〈↑解説〉
麗のほうがエルメノに依存しているという前提でのせりふ。
これを入れようとしたんだけど、麗の中ではもうアイカだらけで、むしろエルメノのほうが麗に依存してる状態になりました。
麗がエルメノに手を差し伸べても、エルメノが断るというシーンを入れて麗に改めてダメージを入れておきたかったのですが、うーん、曖昧になっちゃった。
聖、お前と僕は似てるよ。
血の繋がった者への恋慕に苦しめられて、深く自分を傷つけてきた。
同じ思いをしてるんだ。僕もお前も。
だからこそ歯がゆい。
叶わないのなら、さっさと手放してしまえばいいのに。
諦めてしまえばいいのに。
お前はあの頃の僕を見ているようで、切ないよ。
叶わぬ恋は時が解決してくれるというけれど、可愛そうに、お前の場合は真に運命の男の妹として生まれてきてしまったわけだ。
それも永遠の命を持つ兄。
おまえ自身も永遠の命を持つ神の娘。
他人として生まれ変わるなんて、望むべくもない。
それも僕とエルメノのように物理的に次元を隔てて引き離されることもなければ、海姉上が全く僕を見てくれていなかったのともわけが違う。
お前と僕の最大の違い。
それは失恋をしたことがあるかどうか。
次兄の最高にいやらしいところは、叶えるつもりもないのにお前への愛を抱き続けているところだ。
どんなにお前に冷たく当たったって、お前への愛をひた隠しにしようとしているからだと周りに見抜かれてしまうようじゃ、期待したいお前ならなおさら自ら望みを絶てずに待ってしまうだろう。
失えないこと。
捨てられないこと。
負荷は時間と共に増えていき、お前を歪ませていく。
切ないね。
あまり僕を惨めにさせないでくれ。
お前の姿を見ていると、アイカを抱きしめながらも心の奥底でいつかエルメノを取り戻したいと願っている自分に気づかせられてしまう。
運命の相手って言うのは、叶えられなかった望みを記憶の中の姿に日々刻み込んでいくから、忘れられなくなるだけなんだ。
思い叶わなかったから運命と思う。ただそれだけなんだよ。
中途半端な望みほど辛いものはないね。
大きな違いを抱えていると分かっていても、僕はお前を見てるとやっぱりイライラするんだよ。
さあ、答えはわかっているんだろう?
自分がどうすれば幸せになれるか、分かっているんだろう?
求めろ。
立ち上がって、望みを果たせ。
運命の結末は、命が閉じるときまで分からないのだから。
笑顔が見たい。
僕は、貴女の笑顔が見たい。
――笑って。
貴女の笑顔が見られるなら、僕はどんなことだってするよ。
どうしたらいい?
どうしたら、貴女は笑ってくれますか?
どうしたら貴女は、僕を見てくれますか?
「笑って、ください。海姉上」
そんな死人のような顔をしないでください。
せめて、僕といる時くらいは。
切に願っていたはずだった。
彼女の笑顔を見ることを。
いつも僕を笑顔にしてくれた貴女を、僕も笑顔にしてあげたかった。
育兄上じゃなきゃ駄目だってことは、分かってたよ。でも、やってみなきゃわからないじゃないか。育兄上は、いつも貴女を影で泣かせてばかりだというのに、そんな兄上に僕から貴女を笑顔にしてあげてくださいなんて言えるわけがない。それなら僕が笑わせてあげるしかないじゃないか。僕しか、貴女の苦しみに敏感じゃないんだから。他の誰も、貴女の苦しみを知らない。貴女を救おうとしない。貴女を幸せにしようとしない。
「あっははははははは、はは、あはは、あーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ、ははは、あはは、あはははは……」
そんな笑いは幸せな笑いなんかじゃない。
「姉上……」
そんな壊れた笑い方をしないでください。
「あははははははっ、麗、貴方がやったのよ。貴方が私を犯したの。私は嫌だと言ったのに、貴方が私を無理やり抱いたのよ」
「違っ……違……、姉上が、だって、姉上が……」
「くすくすくす、あはははは、ふふふふふ、」
「あね……」
「さぁ、育は何て言うかしら?」
「……ぅえ……」
「育、早く、来て。私を、助けて……?」
暗い。暗い、暗い。
記憶の底闇。
僕は、もう何も見なくていいと思った。何も聞こえなくて、いいと、思った――。