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聖封神儀伝専用 王様の耳はロバの耳

「聖封神儀伝」のネタバレを含む妄想小ネタ雑記。

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無理(風×愛優妃)

「無理をさせてしまっているわね」

「いいえ。望んで俺は風になったんです」

「一度目はあなたの母君を助けられなかった。二度目はあなたを助けられなかった」

「本来なら、俺ははじめから貴女の子として生まれるはずだったのでしょう?それなのに、なんの手違いか魔法石を宿した俺の魂は周方の第二公妃の腹に流れてしまった。ふふ。分かっているんですよ。第一公妃の嫉妬を煽ったのは貴女でしょう。まずは第二公妃を俺から引き離し、そして炎を餌に俺に人としての人生を捨てさせた」

「……母のふりをするなんて白々しいと……」

「言ってませんよ。感謝しているんです。俺を炎に引き合わせてくれたことを。あるいは、炎に出会うために俺は先に人の腹に宿ったのかもしれない。貴女の力さえも及ばない力で。でも、そのお陰で俺は迷わず俺の神生を歩むことができる。生まれる前から、俺は炎の魂を探していた。彼女のそばに寄り添いつづけることが、俺の道なんです。この執着、異常でしょう?わかってはいるんです。でも、明らかに炎が俺に苦しめられているって俺が悟るまでは……俺はこの神生降りるつもりはありませんから。貴女も悔いないでください。風になることは、俺が望んだんです。彼女に並ぶにふさわしい時間と力を手に入れるために。貴女は俺の望みを叶えてくれた。責めないでください。貴女は、堂々と俺の母親面してればいいんです」

「風……」

「そろそろ行きますね、俺。あまり炎を待たせるわけにはいかないから」

「風、ゆ……」

「許しを乞うなんてずるいですよ。俺はすでに貴女に仕返してる。血の繋がった姉と愛し合うことを、貴女に黙認させているんですから。炎だって少なからず罪悪感にさいなまれていることでしょう。これが、貴女が招いた結果なんです。あなた方の作った法に背き続ける存在を産み出したことが」

「炎を……頼みます。貴方も、どうか無理をしないで」

「分かっております、母上」

何をもって無理と言うのだろう。俺は、何一つ無理なんてしてはいない。
ただひとつ、キースのふりをすることがしんどくなってきていること以外は。
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1-6-1

麗の最期、一気に書き終わりました。
いろいろつっこみどころ満載だけど、ラストは満足。
ちゃんとアイカのところに帰るっていうの、忘れずにかけてよかった。

部分的にメモっていたものとは、麗もエルメノも真逆の心情吐露になっていますが、今回書いたほうがすごく優しいですね。
そのまま使おうか迷ったけど、流れ的になんかぶち壊しになりそうだったので、結局、お互いを思いやってるような形になりました。

違い(麗視点聖)

聖、お前と僕は似てるよ。
血の繋がった者への恋慕に苦しめられて、深く自分を傷つけてきた。
同じ思いをしてるんだ。僕もお前も。

だからこそ歯がゆい。
叶わないのなら、さっさと手放してしまえばいいのに。
諦めてしまえばいいのに。
お前はあの頃の僕を見ているようで、切ないよ。

叶わぬ恋は時が解決してくれるというけれど、可愛そうに、お前の場合は真に運命の男の妹として生まれてきてしまったわけだ。
それも永遠の命を持つ兄。
おまえ自身も永遠の命を持つ神の娘。
他人として生まれ変わるなんて、望むべくもない。
それも僕とエルメノのように物理的に次元を隔てて引き離されることもなければ、海姉上が全く僕を見てくれていなかったのともわけが違う。

お前と僕の最大の違い。
それは失恋をしたことがあるかどうか。

次兄の最高にいやらしいところは、叶えるつもりもないのにお前への愛を抱き続けているところだ。
どんなにお前に冷たく当たったって、お前への愛をひた隠しにしようとしているからだと周りに見抜かれてしまうようじゃ、期待したいお前ならなおさら自ら望みを絶てずに待ってしまうだろう。

失えないこと。
捨てられないこと。
負荷は時間と共に増えていき、お前を歪ませていく。

切ないね。
あまり僕を惨めにさせないでくれ。
お前の姿を見ていると、アイカを抱きしめながらも心の奥底でいつかエルメノを取り戻したいと願っている自分に気づかせられてしまう。

運命の相手って言うのは、叶えられなかった望みを記憶の中の姿に日々刻み込んでいくから、忘れられなくなるだけなんだ。
思い叶わなかったから運命と思う。ただそれだけなんだよ。

中途半端な望みほど辛いものはないね。
大きな違いを抱えていると分かっていても、僕はお前を見てるとやっぱりイライラするんだよ。
さあ、答えはわかっているんだろう?
自分がどうすれば幸せになれるか、分かっているんだろう?
求めろ。
立ち上がって、望みを果たせ。

運命の結末は、命が閉じるときまで分からないのだから。

真実2(麗と海の核心)

 ありがとう、麗。
 ありがとう。
 これで私、何も思い残すことはないわ。
 何も思い残すことなく、穢された自分を嫌いになることが出来る。
 大嫌いだった自分。大嫌いだった神生。
 これでようやく、私、自分を思いきることが出来る。
 あの人以外の痕が残ってしまったこの身体など、もうガラクタ以外の何物でもない。何の未練もなく捨てることが出来るわ。
 さぁ、育、私を見て。
 貴方を愛するがあまり狂い堕ちた女の様を見なさい。
 見ても悔いることなどないと分かってはいるけれど、必ず後悔させてあげる。
 貴方が永遠を誓ったあの女を地獄に落としてあげるわ。
 この、麗に穢された身体に閉じ込めて、ね。

「くすくすくすくす、ふふふふふ、あはははは」

 だから育、早く来て。
 私がいなくなる前に、最期の私を見ていって。
 その、蔑み果てた白い目でいいから、私を、見て?

真実(麗前世篇核心メモ)

笑顔が見たい。
僕は、貴女の笑顔が見たい。
――笑って。
貴女の笑顔が見られるなら、僕はどんなことだってするよ。
どうしたらいい?
どうしたら、貴女は笑ってくれますか?
どうしたら貴女は、僕を見てくれますか?

「笑って、ください。海姉上」
そんな死人のような顔をしないでください。
せめて、僕といる時くらいは。

切に願っていたはずだった。
彼女の笑顔を見ることを。
いつも僕を笑顔にしてくれた貴女を、僕も笑顔にしてあげたかった。
育兄上じゃなきゃ駄目だってことは、分かってたよ。でも、やってみなきゃわからないじゃないか。育兄上は、いつも貴女を影で泣かせてばかりだというのに、そんな兄上に僕から貴女を笑顔にしてあげてくださいなんて言えるわけがない。それなら僕が笑わせてあげるしかないじゃないか。僕しか、貴女の苦しみに敏感じゃないんだから。他の誰も、貴女の苦しみを知らない。貴女を救おうとしない。貴女を幸せにしようとしない。

「あっははははははは、はは、あはは、あーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ、ははは、あはは、あはははは……」

そんな笑いは幸せな笑いなんかじゃない。

「姉上……」

そんな壊れた笑い方をしないでください。

「あははははははっ、麗、貴方がやったのよ。貴方が私を犯したの。私は嫌だと言ったのに、貴方が私を無理やり抱いたのよ」
「違っ……違……、姉上が、だって、姉上が……」
「くすくすくす、あはははは、ふふふふふ、」
「あね……」
「さぁ、育は何て言うかしら?」
「……ぅえ……」
「育、早く、来て。私を、助けて……?」

暗い。暗い、暗い。
記憶の底闇。

僕は、もう何も見なくていいと思った。何も聞こえなくて、いいと、思った――。
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和泉有穂
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自己紹介:
ユジラスカの館で「聖封神儀伝」を連載しています。
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