聖、お前と僕は似てるよ。
血の繋がった者への恋慕に苦しめられて、深く自分を傷つけてきた。
同じ思いをしてるんだ。僕もお前も。
だからこそ歯がゆい。
叶わないのなら、さっさと手放してしまえばいいのに。
諦めてしまえばいいのに。
お前はあの頃の僕を見ているようで、切ないよ。
叶わぬ恋は時が解決してくれるというけれど、可愛そうに、お前の場合は真に運命の男の妹として生まれてきてしまったわけだ。
それも永遠の命を持つ兄。
おまえ自身も永遠の命を持つ神の娘。
他人として生まれ変わるなんて、望むべくもない。
それも僕とエルメノのように物理的に次元を隔てて引き離されることもなければ、海姉上が全く僕を見てくれていなかったのともわけが違う。
お前と僕の最大の違い。
それは失恋をしたことがあるかどうか。
次兄の最高にいやらしいところは、叶えるつもりもないのにお前への愛を抱き続けているところだ。
どんなにお前に冷たく当たったって、お前への愛をひた隠しにしようとしているからだと周りに見抜かれてしまうようじゃ、期待したいお前ならなおさら自ら望みを絶てずに待ってしまうだろう。
失えないこと。
捨てられないこと。
負荷は時間と共に増えていき、お前を歪ませていく。
切ないね。
あまり僕を惨めにさせないでくれ。
お前の姿を見ていると、アイカを抱きしめながらも心の奥底でいつかエルメノを取り戻したいと願っている自分に気づかせられてしまう。
運命の相手って言うのは、叶えられなかった望みを記憶の中の姿に日々刻み込んでいくから、忘れられなくなるだけなんだ。
思い叶わなかったから運命と思う。ただそれだけなんだよ。
中途半端な望みほど辛いものはないね。
大きな違いを抱えていると分かっていても、僕はお前を見てるとやっぱりイライラするんだよ。
さあ、答えはわかっているんだろう?
自分がどうすれば幸せになれるか、分かっているんだろう?
求めろ。
立ち上がって、望みを果たせ。
運命の結末は、命が閉じるときまで分からないのだから。
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