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聖封神儀伝専用 王様の耳はロバの耳

「聖封神儀伝」のネタバレを含む妄想小ネタ雑記。

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業―オリジナル―(エルメノ)

僕はどこ?
誰かの代わりになるのは簡単。
他人のことならよく見えるもの。
誰かの代わりとして求められることにも慣れている。
僕は誰?
僕は麗だったり朝来だったり、〈欺瞞〉のエルメノ・ガルシェビチだったりする。
でも、どれも本物じゃない。

生まれたときから一つの体に別の奴と一緒に放り込まれていた。
「君はエルメノとカルーラ二人がいてこその君なんだよ」
そんな言葉に感動なんかしなかった。
そもそもこの体に僕だけだったら、僕はこの体を象徴するエルメノという名のままに自分ひとりを実感することが出来ただろう。
僕は、僕だけで僕なんだ。
カルーラはもう一人の僕じゃない。
あれは完全に僕と正反対の性質を持つ他人だ。

誰かのふりをするのは簡単。
誰かの代わりになることにも慣れている。
でも、カルーラにはなられなかった。
僕がカルーラになってしまったら、どこにも僕がいなくなってしまう。
カルーラさえいなければ、僕はたった一人のオリジナルであれただろう。

一人になりたい。たった一人に。
いつも一人きりでいるのに、僕はそんなときに限ってエルメノじゃないんだ。
どこにいるんだろう、本当の僕は。
探すのは、辛くて苦しい。
だから、僕はまた他の誰かになりすます。
自分は麗だと信じ込むことで。
自分は朝来だと信じ込むことで。
僕は僕を探さなくても済むから。

カルーラ。
お前の影が今も僕の心に闇を落とす。
体が分かたれたのに、僕は闇に落ち、君はまんまと光の世界に残って、僕の欲しかった称号を手に入れた。
君が僕の代わりをすることに躊躇いなかったのも、また気に食わない。
君はつまり、僕のことを真に他人だと思っていたってわけだ。
はじめから僕のことなど歯牙にもかけていなかったわけだ。
僕が表に出ていた時も、勝手にやっていればいいと思っていたんだろ?
いずれ女神が自分に微笑むと知っていたから。
たまらないよ。
ああ、たまらない。
結局、僕はお前に僕を認めさせたいだけだったんだ。
お前が僕を認めてくれたら、そのときようやく僕は僕を見つけられる気がする。
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ユジラスカの館で「聖封神儀伝」を連載しています。
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