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聖封神儀伝専用 王様の耳はロバの耳

「聖封神儀伝」のネタバレを含む妄想小ネタ雑記。

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幹也の正体をばらしたアリス(2-3-1)

幹也「アリス……いや、オウシャ」
アリス「ん? なんだ? 怒ってるのか? ばらして」
幹也「ものには順番というものがあるだろう」
アリス「順番? 鬼の宿蓮とも呼ばれた者が、何情を湧かして甘い兄貴面をしているのやら。らしくないぞ。それとも、お主が嫌だったか? もっと家族ごっこを続けたかったか? 幹也」
幹也「……葵は大切な妹だ。できれば無用な傷なんか負わせたくない」
アリス「傷ねぇ。思い合ってるなら、傷も絆になるのではないかな?」
幹也「きれいごとだ!」
アリス「そうかな。昔のお前ならきっとあっさりそう言ったぞ。ま、違うのはこの期に及んでまだ何も触れていないところによく表れているな」



幹也「この期に及んでとは? あんたが出てきたってことは、あっちでも何かあったか?」
アリス「クーデターだよ。奈月の玉座がひっくり返った」
幹也「クーデター? 奈月で?」
アリス「鈍いな。お主、本当に宿蓮か?」
幹也「思い出したくないのは俺も同じだ」
アリス「でも妹を守るためだから甘んじて思い出すって? 泣かせるね。そんなんだから、今の今まで炎があんな腑抜けなんじゃないか。思えば最後の方になればなるほど、お主は炎に甘くなっていったものな。お主さえしっかりしておれば……」
幹也「オウシャ」
アリス「言うぞ。せっかく今生、また会えたんだ。会ったら言ってやろうと思ってた。お主が炎を甘やかしたから、あいつは死んだんだ。それも、一番最悪なやり方で!」
幹也「炎は……」
アリス「死にたがってた? 本当にそうか? 一番近くにいたお主にはそう見えていたか? 違うだろう? あいつは生きたがってた。ばかみたいに生きたがってた」
幹也「そうだ。だからこの世界を用意したんだ。この時間を、この時代を、この国を、この家族を。あの子が今度こそ自分で幸せを掴めるように、私は……!!!」
アリス「見て見ぬふりをしたんだな」
幹也「!」
アリス「その結果がこれだ。情にほだされて、何が妹を守るだ。本当にこのまま兄貴面したままで守れると思ってたのか?」
幹也「っ」
アリス「潮時だ。本当は機会をうかがってたんだろう? 自分の正体を明かす機会を」
幹也「そうだ。言おうと思ったんだ。ちょうどさっき、ここで! それを邪魔したのはあんたじゃないか」
アリス「これは失礼。でも、結果は起こってみなきゃわからんよ。あたしが出てこなきゃ、お主はまた逃げていたかもしれない」
幹也「そんなことはない」
アリス「覚悟ができていなかったのは、顔によく表れていたぞ。兄妹、血が繋がっているとよく似た表情になる。どちらかというと、葵はうすうす感づいていたみたいだがな。お主の方がよけいにショックを受けた顔をしていたよ」
幹也「笑うな! 俺だって……俺だって、できれば兄貴のままあいつを守ってやりたかったさ。こんな味方を減らすような真似、したくなかった」
アリス「何を言う。あたしたちは味方だろ? 今も昔も」
幹也「俺は炎の味方じゃない。葵の味方でいたかったんだ」
アリス「覚醒が必要なのは、お主もみたいだな」
幹也「ほっとけ。なら目覚ましに聞いてやる。奈月のクーデター、詳細を聞かせろ」
アリス「そうこなくっちゃ」
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和泉有穂
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自己紹介:
ユジラスカの館で「聖封神儀伝」を連載しています。
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