幹也「この期に及んでとは? あんたが出てきたってことは、あっちでも何かあったか?」
アリス「クーデターだよ。奈月の玉座がひっくり返った」
幹也「クーデター? 奈月で?」
アリス「鈍いな。お主、本当に宿蓮か?」
幹也「思い出したくないのは俺も同じだ」
アリス「でも妹を守るためだから甘んじて思い出すって? 泣かせるね。そんなんだから、今の今まで炎があんな腑抜けなんじゃないか。思えば最後の方になればなるほど、お主は炎に甘くなっていったものな。お主さえしっかりしておれば……」
幹也「オウシャ」
アリス「言うぞ。せっかく今生、また会えたんだ。会ったら言ってやろうと思ってた。お主が炎を甘やかしたから、あいつは死んだんだ。それも、一番最悪なやり方で!」
幹也「炎は……」
アリス「死にたがってた? 本当にそうか? 一番近くにいたお主にはそう見えていたか? 違うだろう? あいつは生きたがってた。ばかみたいに生きたがってた」
幹也「そうだ。だからこの世界を用意したんだ。この時間を、この時代を、この国を、この家族を。あの子が今度こそ自分で幸せを掴めるように、私は……!!!」
アリス「見て見ぬふりをしたんだな」
幹也「!」
アリス「その結果がこれだ。情にほだされて、何が妹を守るだ。本当にこのまま兄貴面したままで守れると思ってたのか?」
幹也「っ」
アリス「潮時だ。本当は機会をうかがってたんだろう? 自分の正体を明かす機会を」
幹也「そうだ。言おうと思ったんだ。ちょうどさっき、ここで! それを邪魔したのはあんたじゃないか」
アリス「これは失礼。でも、結果は起こってみなきゃわからんよ。あたしが出てこなきゃ、お主はまた逃げていたかもしれない」
幹也「そんなことはない」
アリス「覚悟ができていなかったのは、顔によく表れていたぞ。兄妹、血が繋がっているとよく似た表情になる。どちらかというと、葵はうすうす感づいていたみたいだがな。お主の方がよけいにショックを受けた顔をしていたよ」
幹也「笑うな! 俺だって……俺だって、できれば兄貴のままあいつを守ってやりたかったさ。こんな味方を減らすような真似、したくなかった」
アリス「何を言う。あたしたちは味方だろ? 今も昔も」
幹也「俺は炎の味方じゃない。葵の味方でいたかったんだ」
アリス「覚醒が必要なのは、お主もみたいだな」
幹也「ほっとけ。なら目覚ましに聞いてやる。奈月のクーデター、詳細を聞かせろ」
アリス「そうこなくっちゃ」
PR