Q「君は何でオネエになったの?」
A「生まれ変わりたくて」
Q「なんで?」
A「だってせっかく名前も国も役割も別なものを求められているんなら、いっそ性別だって転換しちゃった方が新しい自分になれる気がしない? 服と言葉遣いと心映え一つで性別まで変えられるならやってみようって気になるでしょう?」
Q「それならどうして性転換手術までしなかったの?」
A「……そんな技術、神界にないでしょ! 安全性の問題もあるし、第一、私のこの美しい身体にたとえ手術の為でも傷をつけるなんて嫌だったのよ!」
Q「……嘘つき」
A「なんですって?」
Q「嘘つき……本当は未練があったからでしょう?」
A「何に?」
Q「好きな人、いたんでしょう?」
A「何言ってるの、そんなの心が生まれ変わった時にとっくに忘れたわ」
Q「それなら、大事な人。その人を守るために、水海王やる決心したんでしょう? 本当は違うのに」
A「そんなことは、ないわよ? 本当は違うとか、失礼な。私が本物の水海王よ。何か文句ある?」
Q「かわいくてかわいくて仕方ない妹の涼湖はんが泣いてはるんとちゃう?」
A「泣かないわよ、あの子は。強いもの」
Q「でも、涼湖はんがお兄ちゃんのこと好きだったって、気づいてはったんやろ?」
A「幼い頃は高校生ぐらいのガキでもかっこいい大人に見えるもんなのよ。幻想、幻影。あんなん初恋でもなんでもないわ」
Q「それでも寝込みにチューされたんやろ? リビングでお昼寝しとった時に」
A「戯れやし。口の端っこや。あの子のファーストキスにも入らへん」
Q「なぁ、もしかして女装してるのって、何かの拍子に会うことになっても、妹に恋心向けられないようにするため? 自戒の意味も込めて」
A「自戒って、何言うとんのん。十七歳やで? 十七歳の今を時めくモテモテ男子高校生が、何が悲しくて八歳の小学生に溺れなあかんの。呼べばすぐ来る彼女なんて指の数だけいたし、妹なんてかわいいかわいいって頭撫でてやるのが楽しかったんや。そも、涼湖と年近い従弟の成かて涼湖のこと好きやったんや。それ分かってて何で不毛な恋させなあかんの。ええんよ。俺がいない方があいつらにとってはよかったん。そやからこうして大人しう水海の国で王様してやってん。俺と同じ名前の成が涼湖と結ばれれば、それが一番ハッピーエンドやろ? あの子、早熟やったし、俺がはよ家出なあかんと思っとったん。そやから、これでよかったんやって。俺は俺にできるところからあの子を支える。あの子を守る。俺の存在意義は、生まれた時からそれだけや。大切なお姫(ひぃ)さんを守るためのナイトや。間違えても、こんなえらい恰好した変態があの子に手ぇ出しちゃあかんのや」
Q「ごちそうさまです」
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