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聖封神儀伝専用 王様の耳はロバの耳

「聖封神儀伝」のネタバレを含む妄想小ネタ雑記。

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3-6-6

ああ、やっとここまできた。
徹、頑張ったね。
本当によく頑張ってくれたよ。

メルが槐の花びらにかこつけて佳杜菜に囁いたのは「ありがとうございます、母上」。
きっと父上を恨まないでという気持ちを込めて。
錬に囁いたのは「この国をよろしく」かな。
徹には、もうきっとどれだけ言葉を尽くしても足りない。辛い思いをさせてしまって済まないとか、こんなことになって済まないとか、もうたくさんの謝る言葉を飲み込んで、徹が一番気にやまない方法、笑顔を選んだんだと思う。
「これにて、役立たずの姫の物語は終いにございます」というセリフもメモってあったけど、そんな自虐も入る余地ないくらい、忘れているくらい、メルは最期満たされたんだと思う。否。満たされているといいと思う。

青空に消えていく槐の白い花びら。
その描写で〆ようと思ったけれど、どうしても本物のお師匠様の藺柳鐶のことを入れるにはもうこの最後の一行しか見当たらなくて。
蛇足になってしまったかもしれないけど、心残りがありすぎて輪生環に行けなかった藺柳鐶師匠も、ようやく弟子の最期を看取って吹っ切れたみたいです。
もしかしたら空の果てまで花びらを追って消滅したメルの魂を探し続けているのかもしれないけれど、それはそれでもう彼にとっては幸せなのかもしれない。
徹がその影の名を知らないといったのは、師匠の藺柳鐶が幽霊になって娘の周りをうろついていることをしらなかったから、なんだろうあの影、なんとなく藺柳鐶に似てるけど、本物? メルのこと追ってた? いやな奴だぜまったく。という父親心理であまり深く突っ込みたくなかったからだと思います。
佳杜菜にはちゃんと藺柳鐶が後を追って行ったのが見えています。
「よかったね、メル。しあわせに、なってね」
そんなことを心の中で呟いているんだと思います。

さて、幕間。
珍しく幕間が初めから決まっていなくて、二、三考えてみたけどぴったり来なくて。
やっぱり本編中で書き損なったシャルゼスと秀稟との契約のシーンになりそうです。
なんで肝心のそのシーンが書けなかったかって、魔法石が二つに割れている意味が私自身もよくわからなかったからなんですが、種明かしされた今ならそれに合わせて書けそうです。

そして終章。
実は徹最大の難関なんじゃないかと。
佳杜菜と仲直り? できるのか。
佳杜菜は怒っているのか? それとも、受け入れてくれるのか?
なんとなく受け入れてくれそうな気が今したぞ。
ネタ帳ではかなり微妙なことになっていますが、本篇最後でメルが何かを囁いていってくれているので、きっと大丈夫なんじゃないかと思います。
時間はかかるかもしれないけれど。

ああ、でもここまで来れてようやくすっきりしました。肩の荷が下りました。
徹に娘殺しさせるのがすごくすごくつらくて、絶対できないよ、でもやらないと追われないよ、ほかの方法はここでは有効にできないよ、でもいやだ、殺させたくない……6章に入ってからずっとそればっかり考えていました。だからすごく書くのが延び延びになってしまって。いろいろと寄り道をして、シャルゼスと秀稟の父娘関係を見出したりとかして、少しずつ積み重ねていって。
最後は徹が覚悟を決めてくれたんだと思います。
藺柳鐶として斃す決意を。
書き手もそうだけど、葵たちも魔物の姿をしていると剣を向けやすいけど、同じ人の形をしていると剣を向けにくくなる。娘に手をかけることとともになんかそういうのも含めてすごく覚悟が決まるまでに躊躇がありました。
でも、それでいいんです。躊躇せず、ざっくりやってしまうならもうそれは徹じゃない。悩みぬいてくれたのが、私はすごくうれしかったです。ちゃんと人として生きてくれたんだと。

徹編は本当に久しぶりに、高校の時書いていたようにのびのびと彼らの声を大切にして書くことができて、いろんな矛盾点やありえなさやなんやらもあるけれど、でも、人生なんて矛盾だらけです。伏線に見えたものが回収されずに放置されていくことだってあるんです。当時はそううそぶいていましたが、やっぱりそういうもんなんじゃないかと思います。そんなところでリアルを出すなという感じですが、彼らの声を殺して書いてもそれはもう聖封伝じゃないから、これからも好きなように生き生きと主張していってほしいと思います。
その点、徹は本当に声がでかくて(笑)
樒も本性引っ張り出されるくらい影響力大の上に、私ととても相性が良かったです。

余談ですが、恋人にするなら風ですが、夫にするなら徹がいいと思っています。

*************
闇獄十二獄種は未来の幸福を求めている。
そう徹が言っていて、そういえば樒の花言葉も未来の幸福だったなぁと思いだしたのでした。
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ミートソースとアップルパイを作りながら

泉「そういえば、アルトのところは三人目が生まれたそうですね。何か贈り物をしなくては。何がいいと思います?」
空「ああ、それなんだけどね。実はもう私から贈ってしまったんだよ」
泉「えっ、なにを贈られたんです?」
空「名を」
泉「それはようございますね。何という名を贈ったのですか?」
空「トリム、と」
泉「”神の祝福”ですか! 素敵です! いいなぁ、帝空神様に名づけてもらえるだなんて」
空「(ちょっと間をおいて)お前の名も用意してあるんだよ」
泉「私の名、ですか? 何をおっしゃっているんです。私には泉明神如という立派な名前を付けてくださったではありませんか」
(空、無言で笑っている)
泉「変な帝空神様。そうそう、午後はあの男が来るそうです」
空「あの男?」
泉「ディック・ナイトレイ」
空「ああ、神官の」
泉「わたくし、あの男はどうも信用ならないのです。暗いというか、怖いというか、同じ部屋にいるだけで研ぎ澄まされたナイフを突きつけられているようで」
空「そう人を表面だけで恐れるものじゃないよ。すべての魂は皆同じところから始まる。真っ白な魂が生きることで色を得ていくんだ。ディック・ナイトレイという男も、何か理由があってそういう色をしているのだろう。まあ、神官になる男なのだから、それほど警戒しなくてもいいんじゃないかな」
泉「もう、帝空神様はおおらかすぎます。何でもかんでもいいところばかり見て受け入れて」
空「当り前だろう? すべてのものは、私から生まれたのだから。お前もだよ、泉明神如」
(泉明神如、赤面しながらも微妙に傷つく)

(そう遠くないその後。世界が滅びる直前)
空「お前は無から生まれた有。今後は有極神と名乗りなさい」
泉「そんな……! 何をおっしゃっているんです。この世に神は一人きり。帝空神様おひとりだけではありませんか」
空「私の世界は間もなく滅びる。お前なら無の中でも存在を保てるだろう。次はお前が神となり、新しい世界を創るのだよ」
泉「いやです! 私も帝空神様とともに参ります。どこまでも帝空神様のおそばに居りますから」
空「私の正体を知っているね? そう、無だよ。私が滅びれば、世界も滅ぶ。だけど、厳密には私は滅ぶわけではない。無に戻るだけなのだ。これからはずっとお前のそばにいるよ。お前のそばで、新しい世界が創られるのを見守っていよう。いつか、私も叶うことならば、その世界でまたお前に出会えればいいと思っているよ」

帝空神はお肉が食べられません

帝空神の食べられないもの=肉

空「お肉……はね、ちょっと、ね。だめだね。かわいそうで。もとはなんという動物だったんだろうとか、どんな暮らしを送っていたんだろうとか、最後はどんな気分だったんだろうって考えると、私はね、やっぱり口にするのは憚られるんだよ」
泉「ならどうして食物連鎖なんか作ったんですか?」
空「うっ……だってほら、使い捨てって流行らないだろう? 今は持続可能な社会とか循環社会って言われてるじゃないか。その先駆けとしてだね……」
泉「なるほど! 社会がようやく帝空神様のお考えに追いついてきたんですね。命も循環する世界。それこそが理想ですよね! よろしいことだと思います。そもそも帝空神様はこの世界の創造者様ですもの。食物連鎖の外にいらっしゃる方ですもの。このような質問をしたわたくしが愚かでございました」
空「いや、別にそこまで感極まらなくてもいいんだけどね」
泉「いいえ! とても勉強になりました!」
空「(ぼそっと)素直というか盲目というか……このままで大丈夫だろうか……」

(現代)
樒「夏城君はお肉食べられるの?」
星「肉? 普通に食うけど、なんで?」
樒「(あ、食べるんだ)ちょっと、今度バーベキューでもやろうかって葵たちと話していて、よかったら夏城君たちもどうかなって」
星「いいね、行く行く。俺、牛肉が食いたいな。家だとなかなか食えないから。ラムも癖あるけどうまいんだよなぁ」
樒「(食いつきがよすぎる……夏城君、本当に帝空神様なのかな)じゃあラムもお買い物リストに入れておくね」
星「ああ、楽しみにしてる」
樒「(ぼそっと)帝空神様じゃないかも……」
星「何か言ったか?」
樒「う、ううん、なんでもない」

河山篇は

「ヨジャ・ブランチカ、俺はお前を許さない」
「さて、お前の正義が果たして正しいものなのかどうか、確かめてみようじゃないか」

河山の話でまた正義をやることになりそう。
猜疑のアンチテーゼとして疑われるべき正しいもの。

葵篇は女性にだけ焦点を絞ればよかったんだなぁ。

創り直したい。

あの正義の詩は河山に回したい。

スハイル(3-6-5)

スハイルは鏡を鉱土宮から追い出した首謀者ということで、小物だけどそれなりの地位の人ってことで名前だけ出していました。いや、藺柳鐶のそばに侍っているシーンがあったような気もするけれど。
それくらいやっつけな小物雑魚名前だけキャラだったんですが、なんだか急に大きくなっておいしいところもってっちゃいましたね。

好きなのに、というと語弊が出そうですが、何とかこうしてほしいと思っても思いが伝わらなくて、相手の心はどんどん離れて行って、自分の心も黒く塗りつぶされていくという感じは、積年も相まってよほど苦しかったに違いありません。
望んだ未来が手に入らないことの方が多いとはいえ、すれ違いを重ね、伝えたいことをうまく伝えられず、それでも一番近くにいなきゃならなければ、残された時間と天秤にかけて失望と絶望ばかりが大きくなっていったのだろうか、と。

へたれなおぼっちゃま鏡ですが、開眼してくれればスハイルも報われるでしょう。
本当はスハイル生き残って開眼した鏡の補佐を続けるっていうのもうっすら考えていたんですけど、だめでしたね。

スハイルが考えたことといえば、鏡への恨みや復讐心も多分にあったと思うのですが、砂漠に放逐した時点で、あれ、実は藺柳鐶や闇獄界の魔の手の届かないところに逃がしたんじゃないか、と。
で、錬が何かあったら鏡に力を貸してやってくれとか頼み込んでいた情報もしっかり掴んでいて、砂漠に放逐されついでに、目を醒ました鏡が自分を斃しに来てくれればいいな、と。
闇獄軍や闇獄主を引き入れた自分は今や完全に鉱土の国や神界にとっては悪役だし、悪役だけど宰相としてそれなりの魔力や知力やらを認められていた自分を鏡が斃したら、鏡の地位が上がるんじゃないか、と。
だから、本当ははなから斃される気満々だったんじゃないか、と。

だけど、結局鏡は借りてきた天宮軍は闇獄兵を倒すことに使い、自分の身一つで来てしまった。
悪役ぶりを印象付け、誰一人として自分を擁護するものを出さないために魔物にまでなって鉱土の国の重臣たちに被害を及ぼしたのに、番狂わせで徹たちにぼこられ、ようやく鏡が来たと思ったらその身一つ。
できることなら天宮軍も含め、衆人環視は多い方がよかったのに(以下、のっとられました→)、どこまでも何も考えてない奴、というか、どこまでいっても思想がシンクロしない奴。
ここまで来ると呆れ果ててものも言えない。
何に呆れてるかって?
それでもあいつを王として支えたいといまだ願っている自分にだ。
あいつはどこまでもマイペースで、どこまでも自分本位で、どこまでも俺のことなんか人と思っちゃくれてない。
自分のことを忘れて、俺を神様か何かだと思ってるんだ。
馬鹿だな。本当、究極の阿呆だ。
だけど、「スハイル」って、ここに来るなり魔物と化していた俺をそう呼んだお前の声に、俺は正気を取り戻させられた。
わかるのか、って。
泣きたくなった。
お前と俺とを繋ぐものは、実は何も途切れていなかったんじゃないかって、今までの自分の行いも含めて途方に暮れた。
なんでわかったんだろうな。姿かたちも何もかも違っていたはずなのに。獣の臭いに消されて俺の香りさえしなかったことだろう。それなのに、お前はそれが俺だと分かったんだな。
そこなんだよ。お前のすごいところは。
そこなんだ。
見えてないようでちゃんと見えている。分かっていないようでちゃんと分かっている。
それは当たり前に皆が持っているようでいて、年を取るにつれてどんどんなくしていってしまうものなんだ。
鏡。
俺とお前、ようやく今日、向かい合えたな。
ようやく今日、俺の気持ちが伝えられたな。俺の願いを受け取ってくれたな。
時間はもう無くなってしまったけれど、お前の言ってくれた通りいつかまた、鉱土の国に生まれ変わることがあったら、その時は、そうだな、今度は若い俺が老いたお前を支えてやろう。
また、お前の宰相となって。
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