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聖封神儀伝専用 王様の耳はロバの耳

「聖封神儀伝」のネタバレを含む妄想小ネタ雑記。

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スハイル(3-6-5)

スハイルは鏡を鉱土宮から追い出した首謀者ということで、小物だけどそれなりの地位の人ってことで名前だけ出していました。いや、藺柳鐶のそばに侍っているシーンがあったような気もするけれど。
それくらいやっつけな小物雑魚名前だけキャラだったんですが、なんだか急に大きくなっておいしいところもってっちゃいましたね。

好きなのに、というと語弊が出そうですが、何とかこうしてほしいと思っても思いが伝わらなくて、相手の心はどんどん離れて行って、自分の心も黒く塗りつぶされていくという感じは、積年も相まってよほど苦しかったに違いありません。
望んだ未来が手に入らないことの方が多いとはいえ、すれ違いを重ね、伝えたいことをうまく伝えられず、それでも一番近くにいなきゃならなければ、残された時間と天秤にかけて失望と絶望ばかりが大きくなっていったのだろうか、と。

へたれなおぼっちゃま鏡ですが、開眼してくれればスハイルも報われるでしょう。
本当はスハイル生き残って開眼した鏡の補佐を続けるっていうのもうっすら考えていたんですけど、だめでしたね。

スハイルが考えたことといえば、鏡への恨みや復讐心も多分にあったと思うのですが、砂漠に放逐した時点で、あれ、実は藺柳鐶や闇獄界の魔の手の届かないところに逃がしたんじゃないか、と。
で、錬が何かあったら鏡に力を貸してやってくれとか頼み込んでいた情報もしっかり掴んでいて、砂漠に放逐されついでに、目を醒ました鏡が自分を斃しに来てくれればいいな、と。
闇獄軍や闇獄主を引き入れた自分は今や完全に鉱土の国や神界にとっては悪役だし、悪役だけど宰相としてそれなりの魔力や知力やらを認められていた自分を鏡が斃したら、鏡の地位が上がるんじゃないか、と。
だから、本当ははなから斃される気満々だったんじゃないか、と。

だけど、結局鏡は借りてきた天宮軍は闇獄兵を倒すことに使い、自分の身一つで来てしまった。
悪役ぶりを印象付け、誰一人として自分を擁護するものを出さないために魔物にまでなって鉱土の国の重臣たちに被害を及ぼしたのに、番狂わせで徹たちにぼこられ、ようやく鏡が来たと思ったらその身一つ。
できることなら天宮軍も含め、衆人環視は多い方がよかったのに(以下、のっとられました→)、どこまでも何も考えてない奴、というか、どこまでいっても思想がシンクロしない奴。
ここまで来ると呆れ果ててものも言えない。
何に呆れてるかって?
それでもあいつを王として支えたいといまだ願っている自分にだ。
あいつはどこまでもマイペースで、どこまでも自分本位で、どこまでも俺のことなんか人と思っちゃくれてない。
自分のことを忘れて、俺を神様か何かだと思ってるんだ。
馬鹿だな。本当、究極の阿呆だ。
だけど、「スハイル」って、ここに来るなり魔物と化していた俺をそう呼んだお前の声に、俺は正気を取り戻させられた。
わかるのか、って。
泣きたくなった。
お前と俺とを繋ぐものは、実は何も途切れていなかったんじゃないかって、今までの自分の行いも含めて途方に暮れた。
なんでわかったんだろうな。姿かたちも何もかも違っていたはずなのに。獣の臭いに消されて俺の香りさえしなかったことだろう。それなのに、お前はそれが俺だと分かったんだな。
そこなんだよ。お前のすごいところは。
そこなんだ。
見えてないようでちゃんと見えている。分かっていないようでちゃんと分かっている。
それは当たり前に皆が持っているようでいて、年を取るにつれてどんどんなくしていってしまうものなんだ。
鏡。
俺とお前、ようやく今日、向かい合えたな。
ようやく今日、俺の気持ちが伝えられたな。俺の願いを受け取ってくれたな。
時間はもう無くなってしまったけれど、お前の言ってくれた通りいつかまた、鉱土の国に生まれ変わることがあったら、その時は、そうだな、今度は若い俺が老いたお前を支えてやろう。
また、お前の宰相となって。
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和泉有穂
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自己紹介:
ユジラスカの館で「聖封神儀伝」を連載しています。
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