龍と炎、それぞれ財相と法相に任じられた成神式後、柱廊にてすれ違い様。
龍「俺は炎が法相でよかったと思っている」
炎「え…」
龍「俺は城の中のことしか知らない。俺の作った法は理想を詰め込んだだけのもので、現実とは解離してる部分も多いだろう。そのままじゃただの木偶人形のようなものだ。俺があの法を運用しても、法に縛られるあまり、公正な裁きはできなかっただろう。だが炎、現実に人々の声に耳を傾けてきたお前なら、法をうまく使って人を活かす裁きができるだろう」
炎「そう、だろうか。あたしなんて遊び回るばかりで、法なんて学ぼうともしなかった。それどころか国さえも宿蓮に任せっきりで…今さら世界の仕事は荷が重い」
龍「炎が俺の作った理想に血肉を与えてくれる。楽しみにしてる」
炎「龍…」
炎の傍らを通りすぎていく龍。
一呼吸おいて振り替える炎。
炎「ありがとう、龍」
成神前から龍は法律家として法を研究し、統治のための法律をいくつも作っていた。
対する炎は勉強嫌いで外で遊び回ってばかりいたため、いささか世界の仕事は荷が重いと感じていた。
そこに、できる双子の兄が作った法の運用者である司法を任されたのてある。
不安となぜ龍ではないのかとの疑問がずっと頭から離れないでいた。
統仲王は神界の財政と法律、どちらをどちらに割り当てるか考えたとき、法に精通している龍をあえて人を裁く立場となる法相からはずし、手堅さが活かされる財相に任じた。
理由は龍の読み通りである。
己の作った法を正当化しようとするあまり、人が見えなくなる可能性を忌避したのである。
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