炎ね、お母さんみたいなお母さんになる!
まあ、それは嬉しいわね。炎はよく手伝ってくれるもの。きっとよいお母さんになるわ。
予言書により将来が決められているとも知らず、無邪気に将来の夢を語る母娘。
いいお母さんになる。
そんな夢とも言えないくらい些細な気持ちをどこかへやってしまったのは、いつのことだろう。
火炎の国の所領を拝したときだったか。
母、愛優妃が頻繁に家を開けるようになってからだったか。
夢は忘れ去られ、今生、二度と叶うこともなくなってしまったのだった。
そんな思いを引き継いでいたんだろうか。
ただいまー
帰っても誰もいない家のドアを開ける。
蒼也は保育園。お父さんとお母さんとおじいちゃんたちは仕事。お兄ちゃんたちとお姉ちゃんはまだ学校で。
帰ると、玄関の扉を開くのは、いつもあたしの仕事だった。
雨が降ろうが、雷が鳴ろうが、誰も飛んでかえっては来ない。
だからあたしはもう一度外に飛び出す。
今度こそ誰かのお帰りなさいを聞くために。
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