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聖封神儀伝専用 王様の耳はロバの耳

「聖封神儀伝」のネタバレを含む妄想小ネタ雑記。

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欲望は

欲望は、一度満たされると手放せなくなる。
貪るように求めるようになる。


欲しかったのはあの人の愛。
叶わないとわかっていても、たった一人の女の座。
手放したくはなかった、たった一人の愛の結晶。

星の数ほどの男たちの前で舞を舞い、数多の男たちの心を虜にしてきた。

得られないものはないと思っていた。
皇の情さえ、手にいれた。

跡継ぎとなる皇子とてこの身から産んだ。

でも、ただ一つ得られなかったものがある。

第一王妃の玉座。

公的な場で貴方の隣に並ぶのは、私でなくてあの女。

西楔周方の皇族の血に連なる由緒正しき血統を持つあの女。

美しさも教養も芸事も、万事において秀で、第一皇子すら産んだこの私でも、どんなに望んだって得られないあの清らかさ。


そんなあの女が、皇をとられたと喚きたて、第一皇子が産まれると乳母に毒を盛らせ、果ては私ごと皇宮から追い出して暗殺を企て、狂い堕ちていく様は、憐れでもあり、快感でもあった。

でも、なりふり構わなくなったあの女を、それでもあの人は第一皇妃から降格しようとはしなかった。

所詮、私は踊り子という名の娼婦。
その女の産んだ子供を、将来皇位につける気があったのかどうかさえ、今となっては怪しい。


私が欲しかったのは、あの人の愛。
掛け値なしの、純粋な愛。

この気持ちが満たされることは、二度とない。


せめて、息子にだけは知ってほしい。
私が、位に関係なく純粋にあの人を愛していたのだということを。

望んだ玉座は、あの人の唯一の女性である意味しか持っていなかったことを。


それも、今となっては叶うべくもない。
私は〈人〉なのに長く生きすぎた。

ただ、それだけ。

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獄炎の名前

1 恐怖…アルフレッド
2 悲哀…ルアジー
3 憤怒…ドリマスタ
4 嫉妬…グレア
5 憎悪…レスタト
6 欺瞞…エルメノ
7 猜疑…ハルマ
8 欲望…サラマド
9 傲慢…ジルヒ
10 慨嘆…ガイナ
11 狡猾…サルヴァス
12 悔恨…レイリア


悔恨は出し損ねたけど、エルメノに関してはカルーラが精霊王でエルメノが獄炎の関係だった、と。

ガイナも獄炎の正体で同一人物。

闇獄主に寄生するだけじゃなく、分身に別な身体を持たせることもできる。

ただし本体は寄生主から動けないから、分かれている場合は本体を消さなければ意味がない。


玄熾の欲望

一目見たときから恋に落ちてた。

気高く崖っぷちに立つ女。

風になびく黒髪も、白い胸元もスリットから見え隠れする太股も、血なまぐさい戦場にあっては場違いな女神のようだった。

男なら、誰しも本能的にほしいと思う身体をしていた。

敵将だろうが、呼び覚まされた欲望は消すことはできない。

かといって血の契約をしている炎は裏切れない。

第三次神闇戦争で、炎がオレに短剣を突き立てたとき、オレは痛みに呻きながらやっと解放されたと思ったんだ。
これで、建前上はあの女のもとに行くことができる、と。

まさか拾われるとは思っていなかった。
自分から求めにいって、返り討ちに合うのが関の山だろうと。

はじめてあった日の取引を、彼女がまだ覚えていたことが嬉しかった。

ペットでも何でもいい。

愛なんかなくたっていい。

ただ、至極の快楽を分かち合えればそれでいい。

彼女の欲望=寂しさを埋めてやろうと思ったわけじゃない。

ただオレはあの女を抱きたかった。

あの女は寂しさを忘れるくらいめちゃくちゃにしてくれそうだから、オレを選んだだけだ。

オレたちは利害が一致しただけ。

ペットでも情夫でも好きなように呼べばいい。

言葉の形容なんてなんの意味も持たない。

ただこの思いだけはきっと共有してる。

オレたちは戦友だ。

〈欲望〉の炎に日夜挑み続ける戦友。

だからだろうか。
今度の女はオレに惚れることもなければすがることもない。
対等に欲望をぶつけ合って充足しあう。

だから、今度の女には飽きが来ない。

どんな痴態もさらけ出して快楽を追求して。
虜にされている自分がまた面白い。

愛なんか芽生えなけりゃいい。
この女とだけは、そんな一言で形容できるようなもんで繋がっていたくない。


ああ、これが世に言う「ファム・ファタル」ってやつか。

悪くない。

リセ。
お前が最期までどう足掻くのか、見守らせてもらうことにするよ。

(注)欲望――リセ×玄熾

ほんと、獣のようにがっつくのね。

それがあんたの望みだろ?

あたしの望み?

獣を飼ってみたかったから、オレを拾ったんだろ?

ふん。女に合わせて抱き方を変えてるっていうの?

器用だろ?

あきれた。

あんたの望みは獣のように本能のままめちゃくちゃにされること。埋まることのないその胸の空っぽを忘れるくらい、貪られること。

貴方に愛されたいなんて思ってなんかいないわ。

愛してほしい男をペット呼ばわりする女なんて聞いたことねぇよ。
愛してほしい男には逃げられた。顔にそうかいてある。

捨てたのよ。

じゃあその男もペットだったってことだ。

……。

身体の関係なんてほんとはどうでもいいんだろ? ほんとに愛してほしい男にはそんなこと、求めてない。

貴方に何がわかるっていうの?

炎を探していたとき、偶然、ね。
これも神様の悪戯かな。

神? でき損ないの人間でしょ。

本当にいるのさ。カミサマって方は。
あんたにとりついてるその炎だって、もとはあの方のものだ。

世界を創った神は別にいるって、ほんとだったのね。
でも今はそんなことはどうでもいいわ。

さすが、〈欲望〉を抱えていると、渇くのも早いねぇ。
でも満たされたらおしまいになってしまう。
だから欲望をすり替える。
どんなに抱いても満たされないはずだ。

満たされてはいるのよ? 今までで一番、貴方とは相性がいいみたい。

それは光栄。
じゃあ次はどうしてほしい?

そうね。
それなら、本来の姿に戻ってみて。
いいでしょう?

……さすが〈欲望〉の主は違うわ。

気遣わなくていいのよ。
私の本当の望みは貴方も知る通り。
貴方が叶えられることじゃないんだから。
だから、存分にあたしを満たして。壊れるくらいめちゃくちゃにして、あたしにあの子のことを忘れさせて。

リセ……それが今のオレにできる、あんたへの精一杯なら。

負の心の裏

恐いのは未来が分からないから。
悲しいのは二度と取り戻せないことが分かっているから。
怒るのは相手に自分を理解してもらえないから。
嫉むのは期待を裏切られたから。
憎むのは一度でも愛してしまったから。
欺くのは隠したいことがあるから。
疑うのは傷つきたくないから。
恨むのはまだあなたのことが好きだから。
貪るのは満たされることがないから。
狡いのは自分を守りたいから。
嘆くのは己が無力だから。
悔いるのは未来を見ようとしないから。
苦しいのは終わりの時が見えないから。
驕るのは自分に自信がないから。
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和泉有穂
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自己紹介:
ユジラスカの館で「聖封神儀伝」を連載しています。
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