一目見たときから恋に落ちてた。
気高く崖っぷちに立つ女。
風になびく黒髪も、白い胸元もスリットから見え隠れする太股も、血なまぐさい戦場にあっては場違いな女神のようだった。
男なら、誰しも本能的にほしいと思う身体をしていた。
敵将だろうが、呼び覚まされた欲望は消すことはできない。
かといって血の契約をしている炎は裏切れない。
第三次神闇戦争で、炎がオレに短剣を突き立てたとき、オレは痛みに呻きながらやっと解放されたと思ったんだ。
これで、建前上はあの女のもとに行くことができる、と。
まさか拾われるとは思っていなかった。
自分から求めにいって、返り討ちに合うのが関の山だろうと。
はじめてあった日の取引を、彼女がまだ覚えていたことが嬉しかった。
ペットでも何でもいい。
愛なんかなくたっていい。
ただ、至極の快楽を分かち合えればそれでいい。
彼女の欲望=寂しさを埋めてやろうと思ったわけじゃない。
ただオレはあの女を抱きたかった。
あの女は寂しさを忘れるくらいめちゃくちゃにしてくれそうだから、オレを選んだだけだ。
オレたちは利害が一致しただけ。
ペットでも情夫でも好きなように呼べばいい。
言葉の形容なんてなんの意味も持たない。
ただこの思いだけはきっと共有してる。
オレたちは戦友だ。
〈欲望〉の炎に日夜挑み続ける戦友。
だからだろうか。
今度の女はオレに惚れることもなければすがることもない。
対等に欲望をぶつけ合って充足しあう。
だから、今度の女には飽きが来ない。
どんな痴態もさらけ出して快楽を追求して。
虜にされている自分がまた面白い。
愛なんか芽生えなけりゃいい。
この女とだけは、そんな一言で形容できるようなもんで繋がっていたくない。
ああ、これが世に言う「ファム・ファタル」ってやつか。
悪くない。
リセ。
お前が最期までどう足掻くのか、見守らせてもらうことにするよ。
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