「あたしがあたしであることの証明に…
あたしを抱いて」
愛されてなくてもいい。
愛してなくてもいい。
触れられることであたしがあたしでいられるのなら、誰だって構わない。
その手があたしを形作る。
その手があたしをこの世界に押し留める。
消えるわけにはいかない。
消えることもできない。
あたしはここに居続けなくてはならない。
あたしは、失った温もりを取り戻すのに必死だった。
他の何でも埋められないことは分かっている。
それでも貪るように、あたしは人の体熱を求めつづけた。
何人だっただろう。
顔も名前も忘れたけれど、その何人かを経て、あたしはようやく最初で最後の人に巡りあった。
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