なんだなんだ?お前のそのくそ真面目っぷりときたら。
父親がいい加減だと息子は真面目に育つものです。
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こっちが俺の学部の同級生、糸谷京介。玄熾だ。
どうもはじめまして。って、えぇっ? 玄熾?
どうも~。元気にしてた? 僕のハニーちゃん。
てか幹也、もとい姐さん、なんで男なんだよ。
なんで? それはもちろん男に興味があったからだ。
え、ええっ?
勘違いするな。女の体より男の体の方が何かと便利だと思っただけだ。筋力に優れている上にいろいろと煩わされることもない。守るにはうってつけだろう?
宿蓮て確か握力……
ああ、確か100近く……
林檎片手で軽く握りつぶしてたよな?
してた、してた。
…………………
言いたいことがあるならはっきり言ってもらおうか?
ひぃぃぃぃぃぃっっっ
この手から零れ落ちていってしまう。
この腕から離れていってしまう。
行かないで。
置いていかないで。
私を一人にしないで。
どうしたらいい?
引き止めるためにこの手を伸ばせばいい?
そうしたら、あなたはここに残ってくれる?
心の中に燻る焦りと苛立ち。
どうしてあなたはいつも私をないがしろにするの。
どうしてあなたはわたしを守ってくれないの。
なぜ私を後宮になど迎え入れたの。
私は一人ぼっち。
あなたがいなければ、ここにいる価値もない。
第一公妃を押しのけてまで地位を安泰にしたいわけじゃない。
あなたにも仕事があるって分かっているわ。
でもね。私だって寂しいのよ。
ここよりもあの部屋の方がよかったなんて言わないけれど、
ここにはわたしと話してくれる人も一人もいない。
みんな私を蔑みの目で見るの。
やめさせて、お願い。
私は好きであんな生活を送ってきたんじゃないわ。
親に恵まれずに売られる子供が、あそこにはたくさんいた。
みんな幸せな世界なんてありはしない。
誰かが幸せをむさぼっている時、どこかに幸せをむさぼりとられている人がいるのよ。
見返してやりたいと思ったわけじゃない。
ただ、あなたの心に応えたかっただけ。
今、この地位を確かなものにしたいと足掻くのは、生まれてくる子供のため。
後ろ盾を持たないこの子が、後宮で潰されてしまわないように。
これほど近くで眺められるようになった神の一族でさえ、私を救うことはできないでしょう。
私を救えるのはあなただけ。
それなのに、優柔不断なあなたは、抱けない女になど興味はないのだと私を捨てた。
あなたがいなくなったら、私は誰も頼る人がいない。
ほら、厨の裏口に今日も来ている。
私の父母を名乗る人たち。
私が第二公妃になったと知った途端名乗りを上げてきた人たち。
捨てたくせに。
お金をせびり取ろうと、今日も卑しい笑みを浮かべている。
どうしてこう、私の人生はうまくいかないんだろう。
いなければよかったのに、あんな人たち。
そうよ、いなければいい。
殺してしまえば、いい。
こっそりと、誰にも気づかれないように。
――――
さあ、これでもう、私に恥を塗る人たちもいなくなった。
なのに今度はまたあなたが出てくるのね。
私が実の両親を殺した大罪人だと?
いいえ、違うわ。あの人たちは勝手に死んでしまったのよ。
私の知らないところで。
ああ、なんてうるさい人でしょう。
やっていないと言ったら、やっていないの。
何とかだまらせることはできないかしら。
いいえ、もうお腹が重くなってきたもの。
早く生まれて、私の御子。
私たちが生きやすくなるように。
あなたが生まれれば、きっとあの人も私の元に帰ってくるでしょう。
早く、早く。
――――
本当にここにい続けることが私たちの幸せなのかしら。
あの人は帰ってきたけれど、このこまで第一公妃に命を狙われるようになった。
もう少しで物心がつくようになれば、あることないこと吹き込まれるかもしれない。
本当に、私はここに居ていいの?
本当は分かってるんじゃない?
ここは私の居場所ではないと。
あの人は帰ってきたけど、私に逢いにくるんじゃない。
この子に会うためにだけ私の元に通ってきてるの。
分かってる。
誰も私を必要としてくれてない。
いいえ、必要としてくれてるのはこの子だけ。
その子も、いずれ王になるための教育と称して乳離れすれば私の手から奪われてしまう。
第一公妃の嫉妬からこの子を守ることもかなわなくなる。
それならばいっそ。
そう、いっそ。
もうこんなところ、出て行ってしまえばいい。
この子が私を必要としてくれるなら、私はどこでも生きていける。
この子が生きている限り、私はどんなことをしてでも生きていける。
胸の中に燻り続けた苛立ちとももうお別れ。
そうよ、自由になるのよ。
自由に。
――――
この子を抱えている限り、第一公妃は私を付狙うというの?
なんて執念深いことでしょう。
この子を殺すことよりも、独り占めできるようになった王との間に子をなすことの方が先でしょうに。
「ママ」
愛らしい笑顔。
なのに、たまにとても憎らしくなる。
きっとそんな時は怖い顔をしているのね。
あなたはすぐに怯えた顔になる。
あなたは私の心の鏡。
私がどんな心持ちになっているか、その顔で教えてくれる。
愛しい子。
でも、邪魔な子。
もう逃げるのは疲れたの。
あなたも、こんな母親と一緒にいるよりも、いっそ。
そう、いっそ。
私は子のない夫婦に息子を預け、第一公妃の放った追っ手の前に立った。
一人目から剣を奪い、舞いながら二人目、三人目を手にかけていく。
さあ、一体もうこの手で何人殺したことだろう。
もう戻れない。
こんな手であの子を抱きしめてはいけない。
鬼になりましょう。
わたしは、子を捨てて自分の自由を選んだのだから。
だから、誰か私をあの子から引き離して。
私をこのうわべだけの幸せな世界から切り離して。
「では、闇獄界にいらっしゃいますか」
疲れた私の前に現れた女は、禍々しい美しさを纏って私に手を差し伸べた。
やつれた自分の姿が彼女の紫の瞳に映っているのを見つけたとき、私は彼女の手をとった。
私から離れたくないと泣き叫び、追いすがる子を振り払って、私は闇の世界に足を踏み入れた。
なのに、何故か私の苛立ちは消えなかった。
耳にあの子の泣き叫ぶ声がこだまし続けている。
ああ、イライラする。
迎えに行かなければと、焦りが心のうちにわきあがってくる。
もう行くことはできないのに。
私は、捨てたのに。
早く、行かなければと。
「あなたにぴったりの罰があるのです」
罰。
その言葉はあまりに甘美で、私は彼女の勧めるがままに黒い炎の中に身を投げた。
以来、胸の中の苛立ちと焦りは前にも増して燻り続け、高ぶった神経を蹂躙し続けている。
「無理をさせてしまっているわね」
「いいえ。望んで俺は風になったんです」
「一度目はあなたの母君を助けられなかった。二度目はあなたを助けられなかった」
「本来なら、俺ははじめから貴女の子として生まれるはずだったのでしょう?それなのに、なんの手違いか魔法石を宿した俺の魂は周方の第二公妃の腹に流れてしまった。ふふ。分かっているんですよ。第一公妃の嫉妬を煽ったのは貴女でしょう。まずは第二公妃を俺から引き離し、そして炎を餌に俺に人としての人生を捨てさせた」
「……母のふりをするなんて白々しいと……」
「言ってませんよ。感謝しているんです。俺を炎に引き合わせてくれたことを。あるいは、炎に出会うために俺は先に人の腹に宿ったのかもしれない。貴女の力さえも及ばない力で。でも、そのお陰で俺は迷わず俺の神生を歩むことができる。生まれる前から、俺は炎の魂を探していた。彼女のそばに寄り添いつづけることが、俺の道なんです。この執着、異常でしょう?わかってはいるんです。でも、明らかに炎が俺に苦しめられているって俺が悟るまでは……俺はこの神生降りるつもりはありませんから。貴女も悔いないでください。風になることは、俺が望んだんです。彼女に並ぶにふさわしい時間と力を手に入れるために。貴女は俺の望みを叶えてくれた。責めないでください。貴女は、堂々と俺の母親面してればいいんです」
「風……」
「そろそろ行きますね、俺。あまり炎を待たせるわけにはいかないから」
「風、ゆ……」
「許しを乞うなんてずるいですよ。俺はすでに貴女に仕返してる。血の繋がった姉と愛し合うことを、貴女に黙認させているんですから。炎だって少なからず罪悪感にさいなまれていることでしょう。これが、貴女が招いた結果なんです。あなた方の作った法に背き続ける存在を産み出したことが」
「炎を……頼みます。貴方も、どうか無理をしないで」
「分かっております、母上」
何をもって無理と言うのだろう。俺は、何一つ無理なんてしてはいない。
ただひとつ、キースのふりをすることがしんどくなってきていること以外は。
「あなたの小さい頃の夢はゴジラになることでした。あっていましたか?」
”The dream when it was you small was to have become Godzilla. Were you?”
翻訳サイトに入れて出てきたままを張ってみるという・・・それが話し言葉としてありなのかどうなのかの判断がつかない(笑)
危険と分かりつつ、読み流してくれと、英語で喋ったんだって雰囲気だけ分かってくれればいーなーくらいの感じで、使いました。(あわわわわ)
英語苦手なのに、どうしてオーラルの先生にしちゃったのかって?
外人風貌の人をもぐりこませるなら英語だろう、オーラルだろう、という純粋な中学時代のなせる業です。
そして、今もそれに倣うしか知恵がなかったわたし;;
それにしても、昨今の高校二年生はオーラル能力も上がっているんだろうなぁ。
いきなりアリス先生みたいな授業されても、ぽかんとして無益、無意味、って思うかも?
というか、ああいう考え方ありなのかしら。
アリスが喋るまま、やりたいがままに書いていたので、指導案のツボからは当然ずれてるんだろうなぁ。
とりあえずそこは架空の世界の話なので;;
意外と笑っちゃってるこのクラスの子達、大人だね。
つっこみとボケまでかましてくれた三井、ビバ。