本物の世界の住人が偽物でいっぱいになれば、偽物が本物になれると思ったんだ。
僕は麗の影になりたかった。
麗になりたかったんじゃない。麗とずっと一緒にいられるカルーラになりたかったんだ。
僕はカルーラがいる限り、カルーラの偽物でしかなかった。同じことが出来るのに。僕だって、熱の精霊を治める者の一人なのに。
二人も要らないと、あの時いわれた。
有極神を封じる時、僕はカルーラにそれを押し付けて、――ああ、そう、だから僕は君の本物にはなれなくなってしまったんだ。
自業自得だね。
嫌なことを押し付けてしまったから。
有極神を封じ続けるためのエネルギーを必要とするカルーラの魂は魔法石とともに君の魂に寄り添って、有極神を封じるためにエネルギーを吸い取られ続けることを拒んだ僕はいつまでも君の側には行けず一人きり。
ねぇ、知ってる?
麗、僕らは元は同じ魂だったんだよ。
僕らがこれほど互いを必要としあうのは偶然じゃない。
遠い遠い昔。
まだ世界が今の世界じゃなかった頃。
僕たちは一つの魂だった。
世界の崩壊の衝撃で僕らの魂は二つに分かれ、今の世界では別々の身体に納められてしまったんだ。
麗、君の言うとおり、君は僕であり、僕は君だ。
僕らはどちらも本物の自分なんだよ。
おんなじ存在なんだ。
ただ、不幸なことに、僕らは身体を分けられ、運命さえも正反対の道を歩むことになってしまった。
君は光。
僕は闇。
そういえば、昔も僕らはひとつの中に二人いた。
僕が消えたら、君はこの先ずっと永遠に欠けたままだね。
最近は、それもいいかもしれないと思っているんだ。
君が僕を忘れないように、わざと傷跡を残していくのも。
すきだよ、僕の片割れ。
愛しているよ。
僕たちは、たった二人だけの本当の家族だったんだ。
一つ身体の中に住む、二人だけの家族。
誰もそのことを知らない、秘密の自分。
PR