守景樒には守景樒の愛しい者の姿に見えていたのであろう。
だが、本当は私にはまだ帝空神様に見えていた。
一度だけ機会を与える。
そう言って譲歩してみせたが、それは私のため。
もしかしたら、そのうち帝空神様の記憶も目覚めるかもしれない。
見も知らぬ若造のその口でいい。
帝空神様に「泉明神如」と、私の名を呼んでほしかった。
一度だけ。
待つ機会がほしかった。
新しくつなぎなおされた世界でも〈予言書〉の未来は有効。
私の意に反したこの世界は、いずれ自ら滅びの道を辿ることになる。
だから、私がこの世界に破滅の槌を振り下ろさねばならないその時まで、少し待ってみもよいでしょう?
その間、貴方がもう一人の私の名しか呼ばないことくらい甘受しますから。
気づいてください。
思い出してください。
帝空神様。
貴方の愛し子はここにもいるのです。
もし貴方が私に気づいてくれたなら、私はあの二人の愚かなわが子たちすら許せそうな気がするのです。
貴方の姿さえ見えなければ、私は貴方を憎み恨んだまま今すぐこの世とともに消え去ってしまうことが出来たのに。