一生なんか、望んでいなかった。
貴方にとって、たった刹那の思い出でよかった。
貴方の刹那が、わたしの永遠だから。
法王の妻になったサヨリ様に憧れくらいはあるけれど、自分ではあまりに恐れ多いと思っていた。戯れで十分だと、決めていた。
なのに貴方はわがままで、わたしの心など諮りもせずに、貴方のいない永遠にわたしを縛りつけた。
わたしは人でありたかったのに。
永遠を信じられるくらい、わたしは強くない。
人として生まれたのだから、人として死ぬ。
それが、わたしの望み。
大罪を犯し、多くの人を手にかけたわたしにできる、それが唯一の贖罪。
だからわたしは待っているのです。
貴方に「おかえりなさい」を言うために。
貴方に「さようなら」を言うために。
この世で一番繊細で、わがままな貴方。
誰よりも冰い心を持つ貴方。
愛しています。心から。
あの頃、わたしの存在が少しでも貴方の緊張をほぐせていたらと願って止みません。
そして今、貴方が心から愛せる人に出会っていることを、わたしは願って止みません。
誤解なさらないでください。
わたしが人として死を願うのは、貴方への想いが消え果たからではありません。
これは約束なのです。
わたしがわたしと交わした、何よりも大切な約束。
そう、こればかりは貴方よりもです。
でも、貴方は分かってくださっていたはずです。
分かっていてくださっていると信じたからこそ、わたしは貴方の永遠に一瞬だけ関わったのです。
早く戻ってきてください。
そう願うことは、貴方の平穏な毎日を壊すことだと分かってはいます。
ですが、わたしも人なのです。
繰り返される毎日を、ただ死に向かってやり過ごす者なのです。
千年。子を看取り、孫を看取り、曾孫を看取り・・・どうか、どうかお分かりくださいませ。
人には、あまりに長すぎる時でございました。
アイカは今、貴方のお帰りをお迎えするためだけに冰麗城で働いております。
PR