佳杜菜「(3-2-5の鉱篇を読んでいる)……鉱様はわたくしのことメスゴリラだと思ってましたのね」
徹「あ、そ、それは、あの、すっごく昔の話で、とっても昔の話で、あたふたあたふた」
佳杜菜「女じゃないとか、男と思おうとしていたりとか、惨々ですわね」
徹「違うんだ。照れていたんだ。あのころの俺様、ほら、素直じゃなかったから」
佳杜菜「いいわけなんて聞きたくありませんわ。お気になさらないでくださいませ。サヨリも鉱様のことをスケベで変態で口ばっかりのお調子者で、この▲$@*★野郎と思っていましたから」
徹「か、佳杜菜ちゃん……」
佳杜菜「ところで、鉱様はマザコンだったんですの?」
徹「えっ? いや、違うよ。違うって。小さい頃から別れて住んでたから寂しかったのはあったかもしれないけど、別にそんな何が何でもお母さん、とかじゃないから」
佳杜菜「そうですの? やけにお母様に対する思いが随所に見受けられるなと思ったのですけど」
徹「違うよ! 違うって! だってほら、相手は神界の女神だぜ? 男なら一度は憧れる理想の女!」
佳杜菜「愛優妃さまは女性の原型ですものね。母の原型ですものね。誰でも回帰願望くらい抱きますわよね」
徹「そうだよ。そのとおりだよ。さすが佳杜菜ちゃん、懐が広いなぁ」
佳杜菜「……読んでいると男性陣は皆さんマザコンみたいですものね。麗様も、龍様も何かあるみたいですし、きっとみんなそうですのね」
徹「ううっ、違うよぉ」
河山「無駄に長く生きた男の話をしようか」
消された王子のはなし
第一王妃を倒し、父王に迫るところから。
「生まれたときから俺は血まみれだった」
最後の黒風に至るまで、血塗れの道を歩いている。
洋海「悔しいのはあんただけじゃない」(徹に向かって)
「俺だって、妹を、かわいい姪っ子を守りたかった!」
炎ね、お母さんみたいなお母さんになる!
まあ、それは嬉しいわね。炎はよく手伝ってくれるもの。きっとよいお母さんになるわ。
予言書により将来が決められているとも知らず、無邪気に将来の夢を語る母娘。
いいお母さんになる。
そんな夢とも言えないくらい些細な気持ちをどこかへやってしまったのは、いつのことだろう。
火炎の国の所領を拝したときだったか。
母、愛優妃が頻繁に家を開けるようになってからだったか。
夢は忘れ去られ、今生、二度と叶うこともなくなってしまったのだった。
そんな思いを引き継いでいたんだろうか。
ただいまー
帰っても誰もいない家のドアを開ける。
蒼也は保育園。お父さんとお母さんとおじいちゃんたちは仕事。お兄ちゃんたちとお姉ちゃんはまだ学校で。
帰ると、玄関の扉を開くのは、いつもあたしの仕事だった。
雨が降ろうが、雷が鳴ろうが、誰も飛んでかえっては来ない。
だからあたしはもう一度外に飛び出す。
今度こそ誰かのお帰りなさいを聞くために。