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聖封神儀伝専用 王様の耳はロバの耳

「聖封神儀伝」のネタバレを含む妄想小ネタ雑記。

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玄熾の欲望

一目見たときから恋に落ちてた。

気高く崖っぷちに立つ女。

風になびく黒髪も、白い胸元もスリットから見え隠れする太股も、血なまぐさい戦場にあっては場違いな女神のようだった。

男なら、誰しも本能的にほしいと思う身体をしていた。

敵将だろうが、呼び覚まされた欲望は消すことはできない。

かといって血の契約をしている炎は裏切れない。

第三次神闇戦争で、炎がオレに短剣を突き立てたとき、オレは痛みに呻きながらやっと解放されたと思ったんだ。
これで、建前上はあの女のもとに行くことができる、と。

まさか拾われるとは思っていなかった。
自分から求めにいって、返り討ちに合うのが関の山だろうと。

はじめてあった日の取引を、彼女がまだ覚えていたことが嬉しかった。

ペットでも何でもいい。

愛なんかなくたっていい。

ただ、至極の快楽を分かち合えればそれでいい。

彼女の欲望=寂しさを埋めてやろうと思ったわけじゃない。

ただオレはあの女を抱きたかった。

あの女は寂しさを忘れるくらいめちゃくちゃにしてくれそうだから、オレを選んだだけだ。

オレたちは利害が一致しただけ。

ペットでも情夫でも好きなように呼べばいい。

言葉の形容なんてなんの意味も持たない。

ただこの思いだけはきっと共有してる。

オレたちは戦友だ。

〈欲望〉の炎に日夜挑み続ける戦友。

だからだろうか。
今度の女はオレに惚れることもなければすがることもない。
対等に欲望をぶつけ合って充足しあう。

だから、今度の女には飽きが来ない。

どんな痴態もさらけ出して快楽を追求して。
虜にされている自分がまた面白い。

愛なんか芽生えなけりゃいい。
この女とだけは、そんな一言で形容できるようなもんで繋がっていたくない。


ああ、これが世に言う「ファム・ファタル」ってやつか。

悪くない。

リセ。
お前が最期までどう足掻くのか、見守らせてもらうことにするよ。
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(注)欲望――リセ×玄熾

ほんと、獣のようにがっつくのね。

それがあんたの望みだろ?

あたしの望み?

獣を飼ってみたかったから、オレを拾ったんだろ?

ふん。女に合わせて抱き方を変えてるっていうの?

器用だろ?

あきれた。

あんたの望みは獣のように本能のままめちゃくちゃにされること。埋まることのないその胸の空っぽを忘れるくらい、貪られること。

貴方に愛されたいなんて思ってなんかいないわ。

愛してほしい男をペット呼ばわりする女なんて聞いたことねぇよ。
愛してほしい男には逃げられた。顔にそうかいてある。

捨てたのよ。

じゃあその男もペットだったってことだ。

……。

身体の関係なんてほんとはどうでもいいんだろ? ほんとに愛してほしい男にはそんなこと、求めてない。

貴方に何がわかるっていうの?

炎を探していたとき、偶然、ね。
これも神様の悪戯かな。

神? でき損ないの人間でしょ。

本当にいるのさ。カミサマって方は。
あんたにとりついてるその炎だって、もとはあの方のものだ。

世界を創った神は別にいるって、ほんとだったのね。
でも今はそんなことはどうでもいいわ。

さすが、〈欲望〉を抱えていると、渇くのも早いねぇ。
でも満たされたらおしまいになってしまう。
だから欲望をすり替える。
どんなに抱いても満たされないはずだ。

満たされてはいるのよ? 今までで一番、貴方とは相性がいいみたい。

それは光栄。
じゃあ次はどうしてほしい?

そうね。
それなら、本来の姿に戻ってみて。
いいでしょう?

……さすが〈欲望〉の主は違うわ。

気遣わなくていいのよ。
私の本当の望みは貴方も知る通り。
貴方が叶えられることじゃないんだから。
だから、存分にあたしを満たして。壊れるくらいめちゃくちゃにして、あたしにあの子のことを忘れさせて。

リセ……それが今のオレにできる、あんたへの精一杯なら。

桔梗

桔梗の名前の由来は帰郷。


帰りたい
私のあるべき場所へ
私の望む人のもとへ

いつか、帰れますように

もう、欲深く願ったりなどはしないから

どうかどうか

私をあの人のいる世界に帰して


私のたった一つのふるさと

あの人に触れたい
触れられたい

あの人を感じるための器がほしいなど
二度と望まないから


触れられなくていい
感じられなくていい

ただ 元通り
貴方の側にさえいられれば


帰りたい
それを忘れないために
私はこの名前を私につけたの
名を呼ばれる度に思い出せるように
もう二度と過ちを犯さないために

知将 風環法王

闇獄界へ向かう船の甲板。

育「風、お前はもし炎が闇獄界についていたら、闇獄界まで追いかけていったか?」

風「もちろん」(即答)

育「ならば、もし炎が闇獄界に生まれ変わっていたら、今からでも闇獄界につくのか?」

風、ちらりと育を振り返る。

風「炎は闇獄界に生まれ変わっているんですか?」

育、風を見つめ返す。

風「約束したんです。どこに生まれ変わっても必ず探しだすと。もし炎が闇獄界に生まれ変わっているというなら……」

育「神界を捨てるか」

風「(口許を歪めてうっすら笑う)それを彼女が望むなら」

育「(目の前に広がる満天の星空に視線を移して)闇獄界にはいないよ」

風「(同じく視線を戻して)そうですか(ひとつ伸びをする)なんだか今晩は飲みすぎたみたいです。兄さんの前で粗相する前に部屋に戻るといたしましょう」

風、マントを翻し、星空に背を向ける。
その背に、育、首のみ巡らせて呼びかける。

育「キース」

ひたと風は足を止めた。

育「キース・ロシュタニカ公」

風、ゆっくりと育を振り返る。

真剣な育と苦笑を浮かべている風。
その二人が睨み合うように視線を交錯させる。

育「西楔周方の第一皇子に生まれながら、物心つく前に周方の宮殿を追われ、産みの母のみならず養父母まで殺された。復讐に人の身でありながら風の精霊王を屈服させて剣を得、第一皇妃を暗殺し、実父の周方王には北楔羅流伽よりアイラス姫を後添えにめとり、二度と自分のような子供が生まれぬよう、善政を敷くように諭した。だが、炎と出逢っていなければ、果たして汝の復讐は周方のみに留まっていただろうか」

風「(口許を歪めて笑い)俺がこの期に及んで裏切るかもしれない、と?」

育と風、睨み合う。
俄に甲板を渡る風が強くなる。

育「炎を失った今、貴殿が神界軍を率いて闇獄界に向かう理由は?」

育、探るように風を見つめる。

風「心配しなくても、俺は闇獄界に寝返ったりはしませんよ」

育「今のところは、だろ?」

風、苦笑。

風「まさか、育命法王ともあろうお方が俺を恐れているんですか?」

育「人の身で風の精霊王を屈服させた力も去ることながら、数々の戦を被害を最小限に抑えて勝利に導いてきたその知略。汝ほどの知将を恐れない理由がどこにある?」

風「買い被りすぎですよ」

育「神界にとっては死活問題だ」

風「育兄さんがそんなに用心深いとは思いませんでした」

育「相手がお前だからだよ(するりと冥摘の切っ先を風の首元に宛がって)」

風「(ちょっと星空を見上げて)強いて言うなら――炎はこの世界が好きでした。その世界を守るのに、他にどんな理由がありましょう。たとえ彼女がいなくなっても、意志を継ぐのが残された俺の役目」

育「(冥摘を引っ込めて)そこまで言うのなら信じよう」

風「俺も一つ、お伺いしたいことがあるんですが、よろしいですか?」

育「炎の魂の行く先なら教えられぬぞ」

風「なんだ、残念。なら、別の質問を」

育「何だ?」

風「人の身で法王の皮を被って生きてきた俺のことを、貴方はずっと……(俯いて自ら笑い飛ばし)いえ、なんでもありません。兄さん、甲板は冷えますから、寝酒も大概になされませ」

風、踵を返す。

育「弟だと思っているよ」

風、首を巡らせ育を振り返る。

育「そのような口を利く人がどこにいる」

育、ふっと笑ってみせる。
風、しばし育を見つめた後、笑いだす。

風「くっ、くっくくくくく、あははははははは」
育「くっくっくっくっくっ」

ひとしきり二人で笑った後、風、天を見上げ呟く。

風「(炎がいないこの世界に生き続けている理由)――俺は、死に場所を探しているのかもしれません。人の生死を司る貴方ならお分かりでしょうが――それでは、俺はこの辺で」

風、今度こそ甲板を降りていく。

育「楽にはその命、返せぬよ」

風「(足のみを止め)元より、正しき方法で頂いた時間ではございません。覚悟はできていますよ」

これより半年あまり。
俺は闇獄界の下層でこの身を返すことになる。

育兄さんの言う通り、楽な最期にはならなかった。

風「(無数の闇獄兵に剣を突き立てられながら、胸に忍ばせていた炎の髪房の形見を握りしめ)約束は……守る、よ……エ……ン……」


しきみ

奥山のしきびが花の名のごとや
しくしくきみに 恋ひわたるなむ

巻20-4474
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ユジラスカの館で「聖封神儀伝」を連載しています。
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