キルヒース鉱山で鉱の砂剣をキースが打ったと知った葵。
葵「剣は打たないって約束したじゃない」
宏希「あれはなんていうか……鍛冶師心をくすぐるいい石だったというか、法王様が持ってきたら逆らえなかったというか」
葵「やっぱり剣を打ちたかったのね。試し切りなんかもしたんじゃないの?」
宏希「してないって。ていうか、実は打ってなんかいないんだ」
葵「え? どういうこと?」
宏希「あの石に込められていた秀稟とちょっとお話をして、それを鉱土法王に伝えただけだよ」
葵「本当?」
宏希「もとから秀稟の意思で自在に姿形を変えられたんだ。それを教えてあげただけ。ちょっと意地悪な方法だったけど」
葵「ふーん……まあいいわ。信じる。それにしてもそんなこと一言も話してくれなかったじゃない」
宏希「風の時は話せるはずもないし、キースの時だって実は君の弟が剣を打ってくれと持ってきたことがあるんだよなんて話はできなかったから。君は法王だと気づかれたくなかったんだろ?」
葵「……なんかずるいな。あたしより長生きしてるかんじ」
宏希「実際には250年くらいしか違わないからね。風の方が後に死んだことを考えると生きた時間は同じくらいかも」
葵「250年ていうと麗と同じくらい」
宏希「それくらいだね」
葵「……でもただの人だったのに、どうしてそんなに長生きなの?」
宏希「え……っと、それは……四楔王の血をひいてると寿命長いんだよ。初代に近いほど。ジリアスなんて一人目の人だけどずっと最後まで生きてただろう? オウシャもあれで元は奈月の姫君だって聞いたし、ヴェルドだって時の実は使ってたけど元から寿命長かったんだろうし。サヨリも実はほかの神界人よりは長い寿命を持っていたはずだよ」
葵「あ、そっか。キースって三代目周方王の本当の第一皇子だもんね。ヴェルドとサヨリさんとは腹違いのお兄さんなんだ」
宏希「そうそう」
葵「キースの記憶抱えたまま、腹違いの弟妹たち見守るのってどんな気分だった?」
宏希「どんなもこんなもないよ。いい子たちが育ったなって、それだけ」
葵「ふーん。ねぇ、そういえば四楔王たちはどうして寿命がほかの神界人より長いの?」
宏希「それはね……あ、あんまり話すとそろそろ怒られるんじゃないかな」
葵「もしかして核心に触れるようなことでも?」
宏希「さあ、どうだろう。あ、そろそろ休憩時間終わるよ。戻んなきゃ」(宏希逃げ出す)
葵「あいつあたしよりいろいろ裏の裏まで知ってそうなのよね。いつか全部吐かせてやる」(葵、紅玉の間の所定の位置に戻る)
PR