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「君は狡い人間だね。自分に都合の悪い記憶は全て封じて自分の過去から逃げている。――ぼくと、同じだ」
「同じ?」
「ぼくは人をだますのが好き。だって、ぼくが仕掛けた罠で、十人が十人、みんな驚いてくれる。そして、賞賛を、時に怒りを、彼らは間違いなく首謀者のぼくに向けてくれる。してやったりって、思うだろう?」
「わたしはそんなこと思わない。罠を腫れるほど頭もよくないし、そんなことして注目を集めたって、何も嬉しくない」
「彼らをだますのは、ただのぼくの快楽、趣味だ。だって、彼らはあまりにたやすくだまされ、そしてすぐに見破ってしまう。それが真実ではないと。ねぇ、気づきなよ。君もだましているだろう? ぼくと同じ人を」
「だましている? わたしが?」
「自分を。君も、自分を欺いている。そして、それに気づかないふりをしようとしている。……気づいているのにだまされた不利をし続けるというのは、なかなかに骨の折れることだよね。でも、自分だけはだまされ続けていてもらわなきゃ困る。ぼくたちがそれぞれ抱える真実は、ぼくたちにとってそれぞれ都合が悪すぎる。例えば、今の自分という存在が揺らぎかねないほどに」