ずっと君の夢をみていた。
女神の腹にいる中で、ずっと君の面影ばかり追いかけていた。
記憶に刷り込むように。
魂に捩じ込むように。
記憶を消されても、必ず思い出せるように、刻み付けておこうと思った。
君と過ごしたのはたった二月足らず。
でも、一人で暮らしてきた俺には、君の笑顔はまばゆいばかりに輝いていて、何度目をすがめたことかわからない。
それこそ君は南の太陽よりも白く輝いていて、湖に咲く紅い睡蓮よりも情熱的だった。
どうして追いかけられずにいられよう。
どうして永遠に共にありたいと願わずにいられよう。
どうして、求めずにいられよう。
道を示されたとき、峻巡したのはたしかだった。
君はすぐに帰ってくると書き残してくれたのに、俺がいなければどんな顔をするだろう。
暮らしの跡を残して隠れてしまっては、どれだけ心配するだろう。
しかし、それ以上に、俺の亡骸を見た君は、どれだけ絶望するだろう。
自惚れていたかった。
君が戻るというのなら、それ以上のものを俺は返したいと思った。
俺は、君を待つことではなく、待たせることを選んだ。
女神の言う通り、待っていてくれることに賭けようと思ったんだ。
名前も変わる。
身体も変わる。
記憶すら一時的に失う。
まして、はなから血の繋がった仲になる。
これは賭けだ。
君が血のしがらみを乗り越えて、俺との永遠の時間を選んでくれるかどうかの、これは賭けなんだ。
痛い。
身体が押し潰される。
魂を抜かれる前に心臓を掴まれたときよりも、なお痛い。
忘れてしまいそうだ。
何もかも、痛みごと。
忘れてしまいそうだ。
君のことさえ。
自己を脱がせられる恐怖の痛みに貫かれながら、それでも行くよ。
君の元に。
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