生まれなければよかった。
出逢わなければよかった。
そんなこと、決して思わない。
私は貴方に逢いたくて生まれてきたの。
貴方と一緒に次の命を継ぎたくて生まれてきたの。
貴方と出逢ったこと、貴方とキスをしたこと、貴方と抱き合ったこと。
貴方との思い出は全て大切。
でも、知らなければよかった。
貴方と血が繋がってるだなんて、そんな事実、知らなければよかった。
もし知らなければ、あんなこと願わなかった。
あんなに貴方を渇望しなかった。
もっと穏やかに愛することが出来たのに。
貴方と一つになりたい。
身も、心も。
解け合って一つの流れにたゆといたい。永遠に。
もどかしかった。
血が繋がっていることは嬉しかった。だって、貴方と私、同じものが流れている。
この世で限りなく、私たちは一つに近い。
それなのに、私と貴方は目も髪も色が違えば、性も違う。
違うところなんかなくなってしまえばいいと思った。
血だけじゃ足りない。本当の一つに、なりたかった。
兄妹だと知りさえしなければ、そこまで浅ましい望みも抱かなかったろうに。
兄妹だと知りさえしなければ、あんなこと、望みもしなかったろうに。
何も知らない私は、ただ、貴方の腕の中でまどろむことができれば幸せなはずだった。
聞いて、おかしいの。
貴方の魂がこの世のどこにも存在しなくなって、もう何度生まれ変わっても貴方に出会うことなどなくなったというのに、それなのにね、私、今貴方と一つでいる気がするのよ。
レリュータという偽物の器の中で二人囁きあっていた時よりも、貴方を失ってレリュータに生まれ変わった今の方が、よっぽど貴方を全身に感じているの。
もどかしいのは、貴方の声が聞こえないこと。貴方の笑顔がもう、二度と見られなくなってしまったこと。
貴方に、もう二度と抱きしめてもらえなくなってしまったこと。
自分で自分を抱きしめる夜が、増えてしまったこと。
望みは、叶えられた。
もう、未来などいらない。
私は悔恨の炎を抱いて消滅しましょう。
少しでも、我が子の未来の負担を減らせるように。
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