「ありがとう、樒ちゃん」
思わず口から溢れ出していた。
ありがとうだなんて、変に思われたかしら。
大丈夫、よね。この時間はもうすぐなかったことになる。私たちはまたもとの普通の友人に戻る。
樒ちゃんはごくごく普通の女子高生に戻る。
私はまた、彼女の監視を続ける。
今までと何も変わらない。
何も、変えたくない。変わらなければいいのに。
もう、二度と。
獄炎を抱える苦しみは想像を遥かに凌ぐ。幸せを捨てた者にしか、あれは閉じ込め続けることは出来ない。
彼女は、生きる限り後悔し続けなければならなかった。生きるために後悔し続けなければならなかった。
苦しかったでしょう。
愛する者もいないこの世界で一人、生きる重荷を背をわされたのでは。
闇獄十二獄主、第十二位、〈悔恨〉のレリュータ。
おやすみなさい。
一足早く、安逸な眠りにたどり着いたあなたに、幸あらんことを。
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